しかし、そういう一般的な、常識的な方法で、小社ならではの個性をもった「新しい本」を作るのは限界がありました。
ドクターや看護師の方々は医療のプロであって本づくりのプロではないからです。
論文のような形式で医学を解説することは可能でも、「わかりやすく、使いやすい本」を創意工夫をこらしてつくるのは得意ではないことが多いのです。
仮に得意であったとしても、日々、臨床や研究で非常に多忙で、まとまった量のものを執筆する余裕はほとんどありません。
小社は医学書業界のなかでは、まだまだ新しい出版社。
他社の真似ではなく、「新しい医学書」をつくっていかなくては、成長できません。
ですから、私たちは、今までにない医学書制作を行うため、編集者がドクター・医学生・看護師らとチームを組み、「編集」に積極的に関わって本を作っていく方法を取るようになっていったのです。
その一例が『病気がみえる』。図版を考案し掲載するその量が圧倒的であるため、臨床で忙しい医師だけでは、実質的にはできません。
このため編集部内で編集者が、社員の医師や、アルバイトの医師・医学生とチームを作って図案のアイディアの大半を考えています。詳細は、『病気がみえる』についてをご覧ください。
他の本、たとえば問題集であっても、読者代表の学生らと内容を徹底的に吟味して作っていきます。
こういう感じなので、小社では、読者のニーズを自然につかみ、企画から1ページ1ページの内容にまで深く原稿に関わろうとする、そういう編集者が育つ環境ができていったように思います。